『じゃりン子チエ』の黒目表現

藤田:ここからかなり専門的な話になってくるんですが、『じゃりン子チエ劇場版』の動きの中で特徴なのは「目パチ」なんですね。
「じゃりン子チエ」の原作での目パチって「白目の中の黒目が閉じる」っていう謎の表現なんです(笑)黒目が閉じるって、よく考えたら人間とちゃうやんっていう(笑)
この特徴的な漫画の目パチをアニメーションでどう表現しているか、そこを見ていくと、作画的にいろいろ秘密があるんじゃないか、と。

小田部:これは外国なんかはこういう表現はするんでしょうか。

藤田:自分は見たことはないですね。

應矢:水木しげるさんとかありますよね。

藤田:これはもっと複雑なパターンで。ちょっと動画でざっと見ます。 チエちゃんの表情、特に目だけを注目してほしいんですけど

わーっと口は大きく開いて笑ってます。ここでチエの目パチは例の黒目閉じをしています。ここでまた開いてます。そして、一回だけ、普通のまぶたを閉じる目パチも混ざっているんですよね。
今度は同じカットを視点を変えて、口だけ見ていると、口は目パチをしている間、連続で動いている。
漫画の黒目閉じ目パチになったり、通常のまぶたの目パチになったり、混在しても違和感がないのは、アニメーションの連続性を口が担っているからではないかと思うんです。小田部さんこの辺はどういう設計をされたか覚えておられます?

小田部:これはですね、あの、僕もどういう風にしたかって記憶はないんですけど、あの目で表現できる、漫画のあの感じをですね、それは活かしたいわけですね。
ですから漫画ですとコマでいいんですけど、アニメーションは動きで繋がなきゃならない。 ちゃんと動きを感じたっていうのは、やっぱり口。だからご覧になったら分かるように、その絵の中で止まったまま、パチパチやったりするんじゃなくて、動きの中で表情に自然となる。あるいは、口は変化しながら目がいつの間にか別の目になっているとか。そういう細工はしてるはずですね。

藤田:そう考えると、小田部さんの波の作画と共通している部分かなと思うんですが、それってアニメーションの連続性というところにつながるのでは、と。

小田部:それに上手く繋がるようにだから動きを入れようかとか、そんなことをしてるわけですね。口を変化させつつその目にしちゃおうとか、そういうことはしてますけれども。

藤田:作画の指示を作られた記憶はありますか。この目を使う場合はこういうふうに動かして、とか。

小田部:記憶にないんですよ。だからその都度。 だから本来、はるきさんが感じていた可愛いチエちゃんだったら、閉じ目だってありますから、それを使いつつ。

藤田:漫画原作の表情を維持しつつ、でもちゃんと演技が出来るっていうのをやっている。これが『じゃりン子チエ劇場版』における目パチの特徴的な部分かなと。